皆さんは室内で実験や研究を行う際に、室内温度には注意していますでしょうか。
実は温度の変化によって樹脂や金属で作った製品、器具の寸法は変わっていくのです。
特に樹脂の変化は金属よりも大きいものです。
本日は温度変化による樹脂や金属の寸法変化量はどのくらいなのかを書いていきます。
材料の特性表などで熱力欄によくある「熱膨張率」「線膨張係数」という言葉を見たことがあると思います。
熱膨張率とは、温度上昇によって物体の長さや体積が膨張する割合を温度あたりで表したものです。
JISではパーケルビン(/K)で表しています。
その中でも、物体の長さ変化を示したものを線膨張係数、体積変化を示したものを体積膨張率と呼びます。
寸法は長さなので、線膨張係数を使用して寸法変化量を求めることになります。
具体例
長さ100mmのステンレスが室温10℃~20℃(温度変化量10℃)に変わった際の寸法変化量は[0.00173mm]
に対し、長さ100mmのプラスチック材料であるPMMAが温度変化量10℃で変化する寸法変化量は[0.075mm]
になります。
寸法変化量の式は以下のようになります。
寸法変化量 = 線膨張係数 × 元の長さ × 温度の変化量
線膨張係数は基本的に定数なことから、寸法変化量は元の長さと温度変化に依存すると考えられます。
とくに温度変化は重要で、加工時と検査時に気温が異なると、寸法公差の入っている箇所について加工時には
交差範囲内だったのに、検査時には交差から外れてるということになってしまいます。
もちろん当社では、温度管理を行い一定の環境で加工、検査を行うことで品質を保っております。
金属とプラスチック材料の線形膨張係数の違いですが、
SUS304相当での線膨張係数は、17.3×10^-6と低い値になっています。
SUSだけでなく、金属は基本的に線膨張係数が低く、寸法変化量が少ないと考えてよいです。
アクリルの線膨張係数は45~90×10^-6に対して、PEEKやPPSなどのスーパーエンプラの線膨張係数は、
25~50×10^-6と、約1/2の値になっています。
樹脂で試作をする際に寸法変化量を少なくしたい場合はスーパーエンプラを使用するとよいでしょう。
因みに、線膨張係数の単位についてですが、金属は(10^-6/℃)が多く使われるのに対し、樹脂の単位では(10^-5/℃)が
多く使用されます。寸法差が10倍になってしまうかもしれないので、単位にも注意してみてください。